【第82号】山下泰裕−五輪史に残るドラマチックV

(84年ロサンゼルス・柔道・95キロ超級)

★右足痛めても全試合一本勝ち

山下泰裕 史上最年少(19歳)の全日本制覇。国内外で輝く203連勝。不世出の柔道家、山下の優勝は、五輪史に残るドラマチックなものだった。

 前回のモスクワ五輪は、金絶対といわれながら、日本がボイコット。山下は他の代表選手たちとともに大粒の涙を流した。そして27歳で迎えた今五輪。1回戦を27秒で一本勝ちし迎えた2回戦。シュナベール(西ドイツ)を2分50秒、送り襟絞めにしとめた際に、軸足の右ふくらはぎに肉離れを起こした。

 「全治3カ月、当分は柔道はできない」と言われたほどの重傷。続く準決勝、一本勝ちしたものの、6年間もとられたことのなかった「効果」を先に相手に奪われるなど、右足の異常は明らかだった。

 そして迎えた決勝。相手は巨漢のラシュワン(エジプト)。だが、日本でけいこを積み、武道精神を学んだ男は、あえて山下の痛めた足を攻めなかった。山下は払い腰をかわすと横四方固めで一本勝ち。1メートル80、120キロの大男が何度も、すそで大粒の涙をぬぐった。

 翌年の全日本選手権でで不滅の9連覇を達成し引退。アトランタ五輪、シドニー五輪では全日本ヘッドコーチをつとめたあと、昨年、国際柔道連盟理事に就任。柔道の普及に全力を注いでいる。

写真:モスクワ五輪出場を日本選手団のボイコットで逃し、やっと迎えたロサンゼルス五輪にけがで窮地に陥った柔道無差別級の山下は胴上げされて、金メダル獲得に感極まった=共同


著作権、リンク、個人情報について